日本民俗学 ≒ デジタルアーカイブ?

”日本民俗學の提供せんとするものは結論では無い。人を誤ったる速断に陥れないやうに、出来る限り確實なる豫備知識を、集めて保存して置きたいといふだけである。

歴史の経験といふものは、寧ろ失敗の側に於て印象の特に痛切なるものが多い。従って審かにその順末を知るといふことが、愈々復古を不利不得策とするやうな推論を、誘導することにならぬとは限らない。しかし共爲に強ひて現實に眼を施ひ、乃至は最初から之を見くびつてか入り、たゞ外國の事例などに準據せんとしたのが、今まで一つとして成功して居ないことも、亦我々は體験して居るのである。今度といふ今度は十分に確賀な、又しても反動の犠牲となつてしまはぬやうな、民族の自然と最もよく調和した、新たな社會組織が考へ出されなければならぬ。”

柳田国男集 : 定本 第10巻「先祖の話」自序より